「ゲームを使った研修は、本当に効果があるのか?」
「なんとなく盛り上がるのはわかるが、ちゃんと学びになっているのか?」
ボードゲームを研修に使うことを検討している企業担当者から必ず聞かれる質問です。
実は、ボードゲームを使った体験型研修が効果的であることは、教育学・認知科学・組織行動論の研究によって裏付けられています。この記事では、「なぜゲームで学ぶと効果が高いのか」を科学的な根拠から解説し、企業研修での活用ポイントをまとめます。
合同会社ASOBOARDでは、貴社の目的・課題に合わせた最適なオリジナルボードゲーム開発や研修プログラムの設計を専門としています。まずはお気軽にご相談ください。
<ASOBOARDの強み>
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プロダクト責任者
新規事業開発、セールス、PMを経験し、B2B、AI、人材分野に精通したチーフプロダクトオフィサー。ユーザーの潜在ニーズを引き出すプロダクト戦略を牽引。
「学習の定着率」は学び方で7〜15倍変わる
教育学者エドガー・デールが提唱した「経験の円錐」では、学習方法によって記憶の定着率に大きな差があることが示されています。
| 学習方法 | 2週間後の定着率(目安) |
| 講義を聴く(座学) | 5〜10% |
| 読む | 10% |
| 視聴覚(映像・スライド) | 20% |
| デモを見る | 30% |
| グループ討論に参加する | 50% |
| 自ら体験する(ゲームプレイ) | 75% |
| 人に教える・実際に使う | 90% |
ボードゲームを使った研修は「自ら体験する」学習に分類されるため、座学の7〜15倍の定着率が期待できます。
なぜ「体験」がここまで定着率を上げるのか
定着率の差は単なる記憶の問題ではありません。体験型学習では、参加者が「判断する」「失敗する」「修正する」という能動的なプロセスを繰り返します。この繰り返しが神経回路の強化につながり、記憶として長期定着しやすくなります。
座学では「聞いてわかった気になる」状態が生まれやすく、実際の業務場面で知識を引き出せないことが少なくありません。ボードゲームのような体験型学習では「あのゲームで同じ判断をしたとき、こうなった」という具体的な記憶と紐づくため、現場での応用が圧倒的に起きやすいのです。
経験学習モデル(コルブのサイクル)とボードゲームの相性
心理学者デビッド・コルブが提唱した「経験学習モデル」は、人間が最も深く学ぶプロセスを4段階のサイクルで表しています。
コルブの経験学習サイクル
①具体的な体験(Concrete Experience)
↓
②内省・振り返り(Reflective Observation)
↓
③概念化・一般化(Abstract Conceptualization)
↓
④積極的な実験(Active Experimentation)
↓(次のサイクルへ)
ボードゲームがこのサイクルを完全に回す理由
①具体的な体験
ゲームプレイ自体が「体験」です。「コンプライアンスのジレンマを判断した」「交渉で合意に達した」「チームで問題を解決した」という体験が生まれます。
②内省・振り返り
ゲーム後の振り返りタイムで「あのシーン、なぜあの判断をしたか」「受け手はどう感じたか」を内省します。
③概念化・一般化
「自分の判断パターンはこういう傾向がある」「このゲームで学んだことは、現場の○○という場面に通じる」という抽象化が起きます。
④積極的な実験
「次の業務でこう動いてみよう」という行動計画につながります。
なぜ座学・eラーニングではサイクルが回らないのか
座学・eラーニングが効果に限界がある理由も、このサイクルで説明できます。
座学の場合
③概念化(知識を聞く)→ はい終了。体験がないため①②が飛ばされ、④への繋がりが弱い。
eラーニングの場合
②内省や③概念化はできるが、①具体的な体験がなく④への橋渡しが弱い。また個人作業のため他者との対話が生まれない。
ゲームの場合
①②③④のすべてが一連の流れで経験され、サイクルが完全に回ります。
ボードゲームが学習に効果的な認知科学的根拠
フロー理論(チクセントミハイ提唱)
心理学者チクセントミハイが提唱した「フロー状態」とは、活動に完全に没入し、時間感覚を失うほど集中している状態です。フロー状態での学習は、通常の何倍もの効果があるとされています。
ボードゲームは「適度な難易度と明確なフィードバック」というフロー状態を生み出す構造を持っており、学習の最適な状態を自然に作り出します。
感情と記憶の関係
認知神経科学の研究では、「感情を伴う体験は記憶に残りやすい」ことが確認されています。ボードゲームが生み出す「悔しかった」「笑えた」「チームで達成した」という感情が、学習内容を長期記憶に定着させます。
社会的学習理論(バンデューラ提唱)
心理学者バンデューラが提唱した社会的学習理論では、「他者の行動を観察・模倣することで学ぶ」プロセスが重要とされています。ボードゲームでは他のプレイヤーの判断・行動・反応を観察する機会が豊富にあり、この社会的学習が自然に起きます。
心理的安全性と「失敗できる場」
ボードゲームには「失敗してもリセットできる」という安心感があります。これは組織行動論の観点からも重要で、心理的安全性が保たれた環境では、人は挑戦的な判断や自己開示をしやすくなります。
現実の業務では「失敗が許されない」プレッシャーが判断を萎縮させますが、ゲームの枠組みの中では「やってみる」「あえてリスクを取る」という行動が自然に生まれます。この「安全な失敗体験」の積み重ねが、現場での主体的行動を促します。
ASOBOARD COLUMN|「効果の出るゲーム」を設計するために行っていること
ASOBOARDが研修用ボードゲームを設計するとき、必ず問うのは「このボードゲームをプレイした翌週、参加者の職場で何が変わっているか」という問いです。
CGO(最高ゲームデザイン責任者)が担う「体験設計」
ASOBOARDのCGOは、エンジニア出身のゲームデザイナーです。ユーザー体験設計(UI/UX)のバックグラウンドを持ち、大手小売店(DAISO)への卸販売実績を持つ市販ゲームの制作経験があります。
市販のボードゲームと研修用のボードゲームでは求められる設計が異なります。市販のボードゲームでは「もう一度やりたい」という中毒性が重要ですが、研修用ボードゲームでは「プレイした翌日の行動が変わる」という転移性が重要です。
CGOはこの違いを熟知した上で、「楽しさ」と「学習効果」の両立を目指した体験を設計します。
具体的には、ゲーム中の意思決定場面に「現場で実際に起きるジレンマ」を組み込みます。たとえばコンプライアンス研修ゲームであれば、「正しいことはわかっているが、関係性や時間的プレッシャーが判断を歪める」という場面を再現します。参加者はボードゲームを通じてその判断の難しさを身をもって体験し、振り返りで「なぜあの場面で躊躇したのか」を言語化します。
CSO(最高営業責任者)が担う「研修設計の文脈合わせ」
ASOBOARDのCSOは、採用代行支援・人事コンサルティングの専門家です。数十社以上の採用支援・人事制度構築の実績を持ち、「組織が何に困っているのか」を構造的に把握する視点を持っています。
研修用のボードゲームが失敗するパターンの多くは、「ゲームが面白かったが、何を学ぶべきだったのかわからなかった」というズレにあります。
ASOBOARDでは、ゲーム設計前のヒアリング段階で、クライアントの組織課題・人材課題・研修目的を詳細に把握します。そのうえで「このゲームを通して参加者に何を気づかせるか」という学習目標を明確に定義してから制作に入ります。
研修用ボードゲームの効果を最大化する「振り返り設計」
ゲームの効果を研修成果に結びつける最重要ポイントは「振り返り」です。コルブのサイクルで言えば、②③④のプロセスをしっかり回すことです。
どれだけ優れたボードゲームでも、振り返りの設計が弱ければ「楽しかった」で終わります。逆に言えば、振り返り設計さえしっかりしていれば、ゲーム体験が数倍の学習効果を生みます。
効果的な振り返りの3ステップ
STEP1:体験の内省(What)
「ゲームの中でどんな判断をしたか」「どんな場面が印象に残ったか」を言語化させます。ファシリテーターはここで「正解・不正解の評価」をしないことが重要です。全員が安心して発言できる場を作ることが、次のステップへの橋渡しになります。
STEP2:意味の抽出(So What)
「その体験から何が学べるか」「自分のどんなパターン・傾向が見えたか」を分析させます。ここでは「他者の発言を聞いて気づいたこと」も積極的に引き出します。多様な視点が交わることで、個人では気づけなかった自己理解が生まれます。
STEP3:行動への転換(Now What)
「この学びを明日からの業務でどう活かすか」を具体的にコミットさせます。抽象的な宣言ではなく「〇〇の場面で、〇〇という行動をとる」という粒度まで落とすことで、現場での行動変容につながります。
ASOBOARDの振り返り設計のこだわり
ASOBOARDでは、振り返りシートや問いの設計もボードゲームデザインの一部として考えます。
ボードゲーム終了後に渡す振り返りシートの問いの順番・言葉の選び方・グループ討論の構造まで、クライアントの研修目的に合わせて設計します。「ゲームを作って終わり」ではなく、「研修全体として成果が出ること」を目指すのがASOBOARDの姿勢です。
研修効果を測定する方法
ボードゲームに限らず、ゲームを使った研修の効果を可視化するには、以下の測定方法が有効です。
①カークパトリックの4段階評価モデル
| レベル | 測定内容 | 測定方法 |
| レベル1:反応 | 参加者の満足度・好評価 | アンケート(研修直後) |
| レベル2:学習 | 知識・スキルの習得 | テスト・ロールプレイ評価 |
| レベル3:行動 | 現場での行動変容 | 上司評価・行動観察(研修から1〜3ヶ月後) |
| レベル4:成果 | ビジネス成果への貢献 | 業績指標・KPIの変化 |
ゲームを使った研修はレベル1〜2の評価では高い効果が出やすく、レベル3〜4の追跡測定を行うことで長期的な効果を確認できます。
②研修前後の「意識調査」との組み合わせ
より精度の高い効果測定には、研修実施前にも参加者の意識・知識・行動習慣をアンケートで測定しておく「プレ・ポスト測定」が有効です。
研修直後の変化だけでなく、1ヶ月後・3ヶ月後の追跡調査を行うことで、ゲームが引き起こした行動変容の持続性を確認できます。
③「失敗しやすい場面」のモニタリング
研修ゲームで「参加者が最も判断を誤りやすかったシーン」を特定することも有効な測定です。たとえばコンプライアンス研修であれば、ゲーム中の選択データから「どのジレンマ場面で判断がブレやすいか」を把握できます。この分析結果をもとに、フォローアップ研修や現場マネジャーへのフィードバックに活用することができます。
まとめ
研修にボードゲームを使う効果は「なんとなく盛り上がる」からではなく、「経験学習サイクルを完全に回す」「フロー状態を生み出す」「感情を伴う記憶定着」「社会的学習」「心理的安全性の確保」という複数の科学的根拠によって支えられています。
ゲームの「楽しさ」は学習効果の敵ではなく、最大の味方です。
ただし、効果を最大化するためには、ボードゲームそのものの品質だけでなく「振り返り設計」「研修目的との整合」「効果測定の仕組み」が三位一体で整っていることが重要です。
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