ボードゲーム印刷は“デザインの最終工程”ではなく“体験の始まり”
「自分で作ったボードゲームを印刷したい」「企業研修で使うゲームを形にしたい」──。
そんなときに立ちはだかるのが、“印刷”という壁です。
実はボードゲーム印刷は、単に「紙にデザインを印刷する工程」ではありません。
カードの手触り、ボードの厚み、チップの質感──そのすべてが**「遊びの体験」**を決定づけます。
そしていま、個人の制作者だけでなく、
企業・教育機関・行政までもが研修・広報・イベント施策の一環として
オリジナルボードゲームを印刷・制作するケースが増えています。
本記事では、印刷の基礎知識から業者の選び方、費用相場、
そして印刷対応会社までを体系的に解説します。
ボードゲーム印刷とは? ─ “制作の要”になるプロセス
ボードゲーム制作において、最も時間と神経を使う工程が「印刷」です。
なぜなら、印刷はデザインの仕上げであると同時に、プレイヤーの体験そのものを左右する要素だからです。
「印刷」は“見た目”ではなく“体験価値”をつくる工程
ボードゲームをプレイする人が感じる「面白さ」は、実はルールや物語だけでは生まれません。カードを手に取ったときの厚み、盤面の発色、チップの質感──それらすべてが「体験のリアリティ」を形づくっています。
印刷工程は、まさにその“リアリティ”を生むための最終段階。ここでの仕様判断を誤ると、どんなに良いゲームでも「チープに見える」「遊びづらい」「耐久性が低い」といった印象になってしまいます。
たとえば…
同じゲームでも、カードが薄いと「安っぽい」と感じられ、厚くてマット加工がされていると「高級感」や「ブランド感」を感じやすくなります。
ボードゲーム印刷とは、単に「データを出力する作業」ではなく、触覚・視覚・感情をデザインする、最後の“体験設計なのです。
ボードゲーム印刷で扱う主な構成要素
印刷物といっても、ボードゲームは多種多様なパーツの集合体。それぞれの役割と印刷方法を理解しておくことで、「どの部分にコストをかけるべきか」を明確に判断できます。
| パーツ名 | 主な印刷素材 | 特徴・注意点 |
| ボード(盤面) | チップボール+紙貼り | 折りたたみ式が主流。発色・耐久性が重要。 |
| カード | コート紙/マット紙 | 厚み0.3〜0.4mmが標準。角丸・PP加工推奨。 |
| チップ・トークン | 紙 or アクリル or 木製 | 形状カットや印刷精度でコストが変動。 |
| 箱(パッケージ) | 化粧箱 or スリーブ | 見た目の印象を決める。高級感重視ならマットPP。 |
| ルールブック | コート紙 or 上質紙 | フォントサイズ・余白設計が読みやすさを左右。 |
ボードゲーム印刷では、単に“綺麗に印刷する”よりも“目的に合わせた最適化”が重要です。
研修用途なら「耐久性」重視、販売用途なら「見栄えと質感」重視といった設計判断が必要です。
ボードゲームの印刷工程は“制作の最後”ではなく“最初に考えるべき要素”
多くの制作者が陥るのが、「デザインが完成してから印刷を考える」という流れです。しかし実際には、印刷仕様はゲームデザインの初期段階で決めるべきです。
理由は3つあります。
- 印刷方式によって再現できる表現が変わる
例:箔押しを使いたいなら、デザイン段階で余白・塗り足しを設計する必要がある。
- 素材によってデザインの発色が変わる
例:マット紙とコート紙では、同じ色でも明るさとコントラストが異なる。
- 予算と仕様の整合を早期に取る必要がある
例:オンデマンド印刷なら試作段階で調整可能。オフセットは一発勝負。
つまり、「どんな紙で、どんな質感で、どんな枚数で印刷するか」を早い段階で決めることが、後のクオリティとコストを大きく左右するのです。
印刷仕様は“後戻りができない領域”。だからこそ、最初に決める=最も戦略的な判断。
ボードゲーム印刷の目的別アプローチ
同じ「印刷」でも、何のために作るかによって最適な考え方が変わります。
| 目的 | 印刷の方向性 | 推奨仕様例 |
| 個人制作者(自作販売) | コスト効率+見栄え | オンデマンド印刷・マット紙・簡易箱 |
| 企業研修・教育用途 | 耐久性+可読性 | 厚紙・マットPP加工・角丸カード |
| イベント・販促用途 | デザイン性+ブランド表現 | フルカラー・箔押し・高発色オフセット |
研修や教育目的のボードゲームでは、「遊びやすさ」「わかりやすさ」「繰り返し利用可能か」が重視されます。
一方で、プロモーションや販売向けの印刷では、「見栄え」「ブランド感」「パッケージの魅力」が重要です。このように、印刷工程を単なる“製造”ではなく目的を実現するツールとして捉えることが成功の鍵になります。
ボードゲームの印刷は“体験設計”の始まり
ボードゲーム印刷を成功させるためのキーワードは、「体験設計」です。
- カードの厚みは“触覚体験”を生む
- 紙の質感は“世界観”を演出する
- 印刷方式の選択は“コストと印象”を変える
どんなに良いデザインでも、印刷を誤れば、その体験は“伝わらない”。逆に、印刷を意識した設計ができれば、手に取った瞬間に「このゲーム、すごい」と思わせる力を持ちます。
だからこそ、印刷は「最後の工程」ではなく、”最初に考えるべきクリエイティブな選択”なのです。
ボードゲームの印刷方式の種類と特徴
ボードゲームを制作・印刷するうえで、最も重要な判断のひとつが「どの印刷方式を選ぶか」です。同じデザインデータでも、印刷方式が違えば仕上がりの色・質感・コスト・納期がまったく変わります。
ここでは、代表的な3つの方式──オンデマンド印刷・オフセット印刷・特殊加工印刷──の特徴と選び方を解説します。
オンデマンド印刷:小ロット・短納期・試作に最適
オンデマンド印刷は、デジタルデータをそのままプリンター出力する方式です。少量印刷(1部〜100部程度)に向いており、試作品・研修用ゲーム・体験イベントなど「少しだけ作りたい」ケースで非常に人気があります。
特徴
- 小ロット対応(最小1部〜)
- 納期が早い(2〜5営業日)
- 版代が不要でコストが抑えられる
- カラー再現は高精度化しているが、光沢感はやや弱め
向いているケース
- テストプレイ用や初期バージョンの試作
- 小規模研修・教育現場での繰り返し利用
- 個人制作者の販売前サンプル
オンデマンド印刷は短納期で柔軟ですが、大量印刷には不向きです。「とりあえず印刷してみる」段階で活用し、完成版ではオフセットに切り替えるのが理想的です。
オフセット印刷:商業レベルの品質を実現する王道方式
オフセット印刷は、商業用の大量印刷に使われる伝統的な方式です。インクを版からブランケットに転写し、紙に押し付けて印刷します。
色の再現性・発色・安定性が高く、「製品としての完成度」を重視するならこの方式が最適です。
特徴
- 高品質・高発色(プロ仕様)
- 大ロット(500部〜)ほど単価が下がる
- 表面加工(マットPP・グロスPPなど)も安定
- 印刷前に“版”を作るため初期費用がかかる
向いているケース
- 商業流通・クラウドファンディング向けの製品版
- 大規模な企業研修(全国展開・継続利用)
- 販促・ノベルティとしてのブランド表現が必要な場合
一度に数百部以上作る場合、オフセット印刷のほうがトータルコストは安くなります。そのため、「本番印刷」=オフセット、「試作」=オンデマンドという二段階運用が王道です。
特殊加工印刷:体験を“質感”でデザインする
ボードゲームでは、見た目や手触りの「質感」も重要な要素です。そこで活躍するのが、特殊加工印刷。箔押し・エンボス・UVニス・シルクスクリーンなどを使い、触覚・光沢・立体感でゲーム世界観を演出します。
代表的な特殊加工
| 加工方法 | 特徴 | 活用例 |
| 箔押し | 金・銀・ホログラムなどの高級感 | 限定版/企業ノベルティ |
| エンボス加工 | 紙に凹凸をつける立体表現 | タイトルロゴ・マーク強調 |
| UVニス | 光沢仕上げ。部分的に輝かせる | カード裏面の装飾など |
| マットPP加工 | 反射を抑え、手触りを滑らかに | 教材・研修用途の定番仕様 |
特殊加工は目的が明確なときだけ使う**のが鉄則。使いすぎるとコストが跳ね上がり、デザインの統一感を損ないます。「どのパーツで印象を高めたいか」を明確にして選択しましょう。
ボードゲーム印刷の方式別比較表
| 項目 | オンデマンド印刷 | オフセット印刷 | 特殊加工印刷 |
| ロット対応 | 1〜100部 | 300〜数千部 | 加工部分に応じる |
| 費用感 | 安価(小ロット向け) | 中〜高(大ロットで割安) | 高額(+10〜30万円) |
| 納期 | 短い(3〜5日) | 中〜長(10〜20日) | 加工内容で変動 |
| 品質 | 十分高い(再現度90%) | 業務用最高品質 | 高級感・演出重視 |
| おすすめ用途 | 試作・教育・小規模研修 | 商業流通・大規模展開 | 限定版・販促物 |
ボードゲームの印刷方式の選び方
印刷方式の選定は、「何を目的に、どれくらいの数量で、どんな印象を与えたいか」で決まります。
- 試作・教育用途 → オンデマンド印刷
少数でもスピード・コスト・品質のバランスが良い。
- 本番製品・販促用 → オフセット印刷
発色と安定性が抜群。プロ品質。
- ブランディング・特別演出 → 特殊加工印刷
高級感と記憶に残る体験を提供。
特に企業での研修や人材育成目的では、「何度も使える耐久性」と「わかりやすい見た目」が重要です。この場合、マットPP加工×オンデマンド印刷が最適な組み合わせです。
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印刷方式は単なるコストの話ではなく、体験をどう表現するかの選択です。
- 早く試したいならオンデマンド
- 品質を追求するならオフセット
- 印象を残したいなら特殊加工
この3つをどう組み合わせるかで、ゲームの印象は大きく変わります。「誰に、何を、どう感じてほしいか」。その答えを最初に決めることが、最適な印刷方式を選ぶ最短ルートです。
ボードゲーム印刷に使われる素材・仕様・耐久性の基本
ボードゲームの印刷品質を決定づけるのは、どんな素材を選ぶかです。同じデザインでも、紙質や厚み、加工の有無で、見た目も触り心地も耐久性もまったく変わります。
特に、研修や教育現場での利用を想定する場合には、「何度も使える耐久性」と「扱いやすさ」を両立することが重要です。ここでは、素材と仕様をパーツごとに体系的に整理し、実務的な選び方を解説します。
ボードゲーム印刷を構成する主なパーツと素材
ボードゲームの印刷では、以下のような複数の素材が組み合わされてひとつの製品になります。素材の選定次第で、「世界観の再現性」も「ユーザー体験」も変わります。
| パーツ | 主な素材 | 特徴 | 用途・補足 |
| ボード(盤面) | チップボール(厚紙)+印刷紙貼り | 高い耐久性・折りたたみ可能 | 盤面ゲーム全般(すごろく、経営ゲームなど) |
| カード類 | コート紙/マット紙(厚さ0.3〜0.4mm) | 手触りが滑らか。角丸+PP加工が標準 | トレーディング系、イベント、意思決定カード |
| チップ・トークン | 紙製・木製・アクリル | 軽くて扱いやすい。印刷よりもカット精度が重要 | 得点カウンターや通貨など |
| サマリー・説明書 | 上質紙・コート紙 | 情報の可読性を重視。光沢よりも視認性 | ルールブックや研修用配布資料 |
| パッケージ | 化粧箱・スリーブ | 見た目の印象を決定。表面加工が鍵 | ノベルティ・商品販売向け |
企業や教育機関向けでは「PP加工(ポリプロピレン)」を施すことが多く、汗や汚れ、摩擦による劣化を防ぎ、長期利用を可能にします。
紙質の選び方:光沢かマットか、それが印象を変える
紙質選びでまず悩むのが、「コート紙」と「マット紙」のどちらを採用するか。この選択は、見た目だけでなくゲームの雰囲気や可読性にも影響します。
| 紙種 | 特徴 | 向いている用途 |
| コート紙 | ツヤがあり発色が鮮やか。光を反射しやすい。 | デザイン重視・販促用・パッケージ |
| マット紙 | 落ち着いた印象で光の反射が少ない。 | 教材・研修用途・読み物系カード |
| 上質紙 | 光沢なし。ナチュラルで優しい印象。 | 手触りを重視する場合や説明書など |
研修用途のボードゲームでは、照明の下でプレイすることが多く、反射を抑えたマット紙+マットPP加工が最も使いやすい仕様です。
一方で、販売用やプロモーション用のゲームでは、コート紙+グロスPP加工を施すと、発色が際立ち、「高級感」や「プレミアム感」を演出できます。
厚みの基準:手触りと耐久性を決める要素
カードやボードの「厚み」は、体験の質を大きく左右します。薄すぎると安っぽく、厚すぎると扱いづらくなる。最適なバランスを見極めることが大切です。
| 用途 | 推奨厚み | 備考 |
| カードゲーム(トランプ型) | 0.3〜0.35mm(220kg相当) | 手触りとコシのバランスが良い |
| 研修用カード(繰り返し使用) | 0.4〜0.45mm(260kg相当) | 長期使用を想定。角丸加工推奨 |
| ボード(盤面) | 1.5〜2.0mm(チップボール) | 折りたたみ式なら1.5mmが扱いやすい |
| 箱(パッケージ) | 0.5〜1.0mm(板紙+PP) | 強度とデザインの両立が必要 |
「厚さ」よりも「コシ(弾力)」を重視するのがプロ仕様。特にカード類は、何度もシャッフルしても曲がりにくい紙質を選ぶことが重要です。
加工の種類:デザインと耐久性を両立させる技術
印刷後の加工は、単に“見た目を良くする”ためではなく、耐久性と機能性を付与する工程でもあります。
| 加工方法 | 内容 | 効果・メリット |
| マットPP加工 | 表面に薄いフィルムを貼る | 光沢を抑え、汚れ・摩耗を防止。研修用に最適。 |
| グロスPP加工 | ツヤを出すフィルムコーティング | 色の発色を強調し、販促物に最適。 |
| UVコーティング | 紫外線硬化インクで光沢感 | 特定箇所のみ光らせる演出に有効。 |
| 角丸加工 | カードの四隅を丸くカット | 傷みや折れを防ぐ。必須加工。 |
特に教育・研修向けの印刷では、「マットPP+角丸加工」がほぼ標準仕様です。この2つの加工を行うことで、手触りが柔らかくなり、破損や摩耗に強くなります。
耐久性を上げるための設計ポイント
企業研修や学校教育など、何度も使う前提のボードゲームでは、以下のポイントを押さえておくと長期的な品質維持が可能になります。
- カードは1枚単位で再印刷できるようデータを分割して管理する
- トークンは紙よりも木製・アクリル製を選ぶ
- 箱は取り出しやすさを考慮して高さを抑える
- ルールブックは見開き時の自立性を重視
さらに、社内研修用では「ゲームのメンテナンス性」も重要です。カードの欠品や破損が発生した場合に、即時に補充できるようデータ管理をしておくと、印刷コストの最適化と運用の安定性が同時に実現できます。
ボードゲームの印刷における素材選定方法のまとめ
素材と仕様の選定は、体験のデザインそのものです。
- 研修や教育では「手触りと読みやすさ」
- 販売・プロモーションでは「発色と印象」
- 長期運用では「耐久性とメンテナンス性」
つまり、紙と加工は「印刷物」ではなく、伝えたい価値を翻訳するメディアです。デザインだけでなく素材から体験を設計することで、ボードゲームの完成度は一段と高まります。
ボードゲームの印刷工程の流れ:データ入稿から納品まで
ボードゲームの印刷は、見た目こそシンプルに見えますが、実際には 複数の工程とチェックプロセスが緻密に連携して進む“職人仕事” です。
印刷ミスや色ズレが発生すると、修正コストや納期遅延につながるため、全体の流れを正しく理解し、各ステップでの確認を怠らないことが成功の鍵になります。
印刷工程の全体像
一般的なボードゲーム印刷の流れは、以下の5ステップで構成されます。
| 工程 | 主な作業内容 | 目的・ポイント |
| ① データ準備 | Illustrator/PDFでデザインを最終化 | 塗り足し・トンボ・解像度を整える |
| ② 入稿チェック(プリフライト) | 入稿データの整合性確認 | フォント埋め込み・画像リンク切れを防止 |
| ③ 校正確認 | 試し刷り or 簡易サンプルを確認 | 色味・サイズ・裁断位置を最終チェック |
| ④ 印刷・加工 | 本印刷 → 加工(PP・箔押しなど) | 指定紙・加工内容に沿って出力 |
| ⑤ 組立・梱包・納品 | カード・ボードの仕分けと箱詰め | セット内容の確認と品質検査 |
この一連の流れを理解しておくことで、発注側としても「どこで確認すべきか」「何を伝えるべきか」が明確になります。
データ準備
印刷の最初の関門は「入稿データの準備」です。ボードゲームの印刷では、カードや盤面、チップなど複数のデータが同時に入稿されるため、整理されていないデータはトラブルの温床になります。
データ準備チェックリスト
- 塗り足し:3mm以上確保
- カラーモード:CMYK(RGBのまま入稿しない)
- 解像度:350dpi以上
- 文字:アウトライン化
- 背景画像:リンクではなく埋め込み
- トンボ(断ち落とし線)を明確に設定
特に「塗り足し忘れ」「フォント埋め込みミス」は印刷現場で最も多いエラーです。一度印刷してしまうと修正が効かないため、入稿前の最終チェックリストを社内で作っておくことをおすすめします。
校正確認:色味とサイズ感を“目で”確かめる大切な工程
データを入稿したら、次は「校正(こうせい)」と呼ばれる確認ステップに進みます。校正とは、実際に印刷する前にサンプルを出力して誤差を確認する作業のことです。
校正の種類
| 種類 | 内容 | メリット | 注意点 |
| デジタル校正(簡易) | プリンター出力による色味確認 | 早く・安い | 本番と完全一致ではない |
| 本紙校正(正式) | 実際の紙と印刷機で試し刷り | 色・質感がほぼ本番通り | コスト高(1〜3万円程度) |
試作や研修用なら「デジタル校正」で十分。商品販売や展示用途なら「本紙校正」で最終確認を行うのが確実です。
校正段階では、印刷の再現度だけでなく“体験の再現性”も確認しましょう。手触り・厚み・視認性など、実際のプレイシーンを想定して確認すると、思わぬ改善点が見つかることも多いです。
印刷・加工:工程の中心、品質を決める最重要フェーズ
校正で内容が確定したら、いよいよ本印刷へ。ここでは、印刷方式(オンデマンド or オフセット)と、表面加工(PP・UV・箔押しなど)の組み合わせによって最終品質が決まります。
実務ポイント
- 印刷順序:カード → ボード → 箱 → 説明書の順が一般的
- 加工管理:PP加工や角丸は印刷後に行うため、納期に余裕を持つ
- 耐久性確認:繰り返し使用する研修用途では摩擦テストを推奨
また、印刷会社によっては「検査機(色ズレ・ゴミ検知)」を導入しており、品質管理体制を確認することも重要です。特に数百部以上を印刷する場合、ロットごとの品質安定性を確かめましょう。
組立・梱包・納品:最後の品質を守る“見えない作業”
印刷が終わっても、すぐに納品されるわけではありません。カードやチップを仕分けし、セット内容を整え、箱詰めして出荷するまでが印刷会社の仕事です。
よくある組立トラブル
- カードが一部不足/重複して封入される
- ボードと箱のサイズが合わない
- ルールブックが折れたり汚れている
これらを防ぐために、納品前の検品プロセスを確認しておくと安心です。可能であれば、初回納品時に1セットだけサンプルを開封し、実際に遊んでみて「使い心地」と「印刷の耐久性」を確かめましょう。
弊社(ASOBOARD)では、納品前に「体験品質チェック」を実施しています。見た目の印刷精度だけでなく、「遊びやすさ・指触り・箱の取り出しやすさ」まで確認することで、
印刷物を“体験の一部”として品質保証しています。
納期とスケジュール感の目安
| 印刷方式 | 納期の目安 | コメント |
| オンデマンド印刷 | 約5〜7営業日 | 試作・少量印刷に最適 |
| オフセット印刷 | 約14〜20営業日 | 校正・加工を含めると3週間前後 |
| 特殊加工あり | 約20〜30営業日 | 箔押し・エンボスなど追加工程あり |
印刷は“工程が詰まると一気に遅れる”領域。企画段階で逆算スケジュールを立て、入稿期限を守ることが最重要です。
まとめ ─ 印刷は「品質管理のプロセス」である
ボードゲーム印刷の工程は、単なる製造手順ではなく、品質を守り抜くプロセス設計そのものです。
- 入稿前の整合性チェックでトラブルを防ぐ
- 校正で「体験の再現性」を確認する
- 印刷後の検品・梱包で信頼性を高める
この一連の流れを“仕組み化”しておけば、社内研修用でも商業流通でも、安定した品質のボードゲームを作ることができます。
印刷会社を選ぶポイント:失敗しない発注のコツ
ボードゲームの印刷は、見た目以上に「経験」と「理解力」が求められる専門分野です。なぜなら、ボードゲームの印刷は単なる“紙印刷”ではなく、カード・ボード・チップ・箱・説明書など複数素材を一貫して扱う総合プロジェクトだからです。
同じデータを入稿しても、印刷会社によって仕上がりが驚くほど違う。そんなトラブルを防ぐには、会社選びの基準を明確にする必要があります。
「安さ」よりも「理解力」で選ぶのが正解
最も多い失敗が、「見積が安いから」という理由で業者を選んでしまうことです。印刷は工程が複雑で、価格だけでは品質や対応力を判断できません。
印刷トラブルの多くは、実は“仕様の認識ズレ”から発生します。たとえば以下のようなケースです。
- 角丸加工が必要だったが対応してもらえなかった
- 紙の厚さ指定を誤り、カードがペラペラになった
- 箱のサイズが合わず、ボードが収納できなかった
これらはどれも、**「こちらの目的を理解していない」**業者を選んだことが原因です。つまり、価格よりも「意図を汲み取る力」こそが最も重要な選定基準なのです。
実績を確認する:目的に近い事例を持っているか
印刷会社の品質を見極める最も確実な方法は、「過去事例を見ること」です。
| 確認項目 | 着眼点 |
| 制作実績の分野 | 研修用?販売用?イベント用? |
| クライアント層 | 個人中心か、法人・教育機関か |
| 素材・加工の幅 | カード・ボード・箱・説明書まで対応しているか |
| 再注文率・リピート率 | 継続依頼が多いかどうか |
特に企業研修や教育向けの印刷を依頼する場合は、研修現場の実態を理解している業者かどうかが大切です。
紙の強度や視認性、運搬性といった“体験上の要件”まで考慮できるかどうかが、良いパートナーを見極めるポイントになります。
得意分野の見極め:教育・販促・趣味のどれに強いか
印刷会社にもそれぞれ“得意領域”があります。ボードゲーム印刷においては、大きく以下の3タイプに分けられます。
| タイプ | 得意領域 | 特徴 |
| 教育・研修系 | 社内研修・教材印刷 | 耐久性重視。マットPP加工などに強い。 |
| 販促・イベント系 | ノベルティ・展示物 | デザイン性・発色・スピード重視。 |
| 個人クリエイター系 | 同人・少量制作 | 小ロット対応・コスト最適化に強い。 |
企業での利用を前提とするなら、「教育・研修系」に強い印刷会社を選ぶのが鉄則です。単に印刷するだけでなく、「どのように使われるか」を理解してくれるパートナーであることが重要です。
校正・テストプレイ体制があるかどうか
良い印刷会社は、必ず「確認と改善の仕組み」を持っています。特に以下のような体制が整っているかを確認しましょう。
- 試作段階でのデジタル校正 or 本紙校正に対応している
- 試作品を用いたテストプレイのサポートが可能
- 色味や紙質の再現に関して過去の比較データを持っている
これらが揃っていれば、「思っていたのと違う仕上がりになる」リスクを最小化できます。研修用ゲームでは、校正段階でプレイテストを行うのがおすすめです。実際の現場で使ってみて、読みやすさや扱いやすさを検証することで、紙厚や加工の最適化が進みます。
印刷以外の周辺対応力もチェックする
ボードゲーム印刷では、印刷以外の工程─たとえば「データ調整」「梱包」「発送」など─も多く発生します。これらをワンストップで任せられる会社ほど、納期トラブルや追加コストを防ぎやすいのが実情です。
| 項目 | チェックポイント |
| データ入稿サポート | Illustratorテンプレートや入稿代行があるか |
| 組立・梱包対応 | 箱詰めやセット化を任せられるか |
| 納品形態 | 社内納品/イベント会場納品/倉庫直送に対応か |
| アフターフォロー | 再印刷・増版時のデータ保存体制があるか |
弊社(合同会社ASOBOARD)に依頼するメリット
弊社は単なる「印刷会社」ではなく、目的理解から印刷設計までを行うボードゲーム制作会社です。研修や人事施策、マーケティング戦略の文脈を理解したうえで、最適な印刷仕様をご提案します。印刷を目的にしない」ことを大切にしています。印刷はあくまで手段。目的を理解し、必要な形だけを残すことが、結果的に最もコストパフォーマンスの高い選択になります。
| 強み | 内容 |
| ビジネス理解が深い | 経営・マーケティング戦略を前提に、印刷の目的を外さない |
| 人事業界経験者が多い | 制度設計・研修・タレントマネジメントに明るい |
| 合理的な要件定義力 | デザイン性と実用性を両立する仕様提案 |
| 印刷しない選択も伝える誠実さ | 不要な制作を進めず、最適解を提案 |
| 印刷後の活用支援 | ファシリテーター向け資料・研修マニュアルも制作可能 |
ボードゲームの印刷会社選びチェックリスト
最後に、発注前に確認しておくべき項目を一覧にしました。このリストを活用すれば、初めてのボードゲーム印刷でもスムーズに判断できます。
| 項目 | 内容 | 確認済み |
| 実績 | 目的に近い事例があるか | ☐ |
| 得意分野 | 教育・販促・個人など、自社用途に合うか | ☐ |
| 校正体制 | 試作・確認の仕組みがあるか | ☐ |
| 製造ネットワーク | 紙・加工・箱など一貫対応か | ☐ |
| 運用サポート | 再版・メンテナンス支援があるか | ☐ |
| コミュニケーション | 担当者が目的を理解しているか | ☐ |
まとめ: “安さ”よりも“共創力”を重視せよ
印刷会社を選ぶとき、最も重要なのは「こちらの目的を理解し、一緒に考えてくれるか」。ボードゲーム印刷は、単なるモノづくりではなく、体験設計の延長線上にあるクリエイティブ業務です。
安さではなく、目的を理解し、構造的に提案してくれる会社こそ、最終的に“費用対効果の高い印刷”を実現してくれます。

エンジニアならではのUIUXに重きを置いたボードゲーム制作が得意。処女作では大手小売店への卸実績を持つ。ASOBOARDではゲーム制作のブレインとなり、Chief Games Officer(CGO)としてゲーム制作の統括責任者を担う。













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